ブームワッカー の  ミニ科学

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叩いて音階を出す楽器・・・ブームワッカー・・・って、下の木琴のような楽器かと思ったのですが、

実は、そうでは無かったです。

管楽器の仲間だったのですね。


ブームワッカー・・・って、チューブ(パイプ)の長さが、だんだん短くなっていますよね。

そうです・・・。 パイプの長さがだんだん短くなっている楽器には、こんな物が有ります。


コンサートホールや教会のパイプオルガン

ペルーやハンガリーの民族楽器 Panpipe (パンパイプ)

短い物や小さな物の方が、高い音になる・・・と言うのは、なにも ブームワッカー で無くても分かりますが、

それは何故でしょうか。

 図1

上の図は、両端を切りっぱなしのパイプの中の空気を振動(正確には共振させる)させたときの、空気の振動の様子を模式的に示した図です。

詳しくは、管内の空気柱の振動モード などと呼ばれます。

両端部は、自由な空間に開いているので、最も抵抗が少ないため、大きく振動します。
その様子を、
ピンクの幅を太く 示しています。

一番左、Tの図の真ん中の部分は、ピンクの幅がゼロ になっています。
この部分は、空気が殆ど動いていない部分となります。

ピンクの幅が最も太い場所・・・そこを、振幅の腹
ピンクの幅がゼロの場所・・・そこを、振幅の節

と呼びます。

パイプの中の空気が、このように振動している時、パイプからは、一定の周波数の音(音波)が出ています。

その音波の
波長・・・これが、音の高さを決めますが・・・は、ピンクの幅が、最大から最小になり、また最大になる・・・その2倍が、1波長 と言う事になります。

一番左、Tの図の場合、音波の波長 パイプの長さ  の、約2倍です。 (正確には、開口補正と言って、パイプの端の外の空気も振動しますので、2倍より少し長くなります)

音波の波長 (λ ラムダ) が分かると、音の高さ (周波数) (f )Hz が決まります。 その関係は、空気中で音の伝わる速さ 音速 V=340 m/sec として、

f = V/
λ  となります。

一番左、Tの図の場合、音波の波長 (λ ラムダ)  パイプの長さ  の、約2倍ですので、

f = V/2L  となります。

すなわち、パイプの長さが短ければ、音の高さ (周波数) (f )Hz は高い音になります

パイプの長さで、それぞれの 音の高さ (ピッチ) が決まります

上の図の二番目 Uの場合は、音波の波長 (λ ラムダ)  パイプの長さ  に近い値になります。

従って、音の高さ (周波数) は、f = V/  となります。 これは、2倍の高さの音・・・第2倍音 が出ていることを示します。

以下、同様に、Vの場合は、第3倍音。 Wの場合は、第4倍音 がでていることを示します。


この時の様子が、目に見えると面白いでしょうね。

弦楽器ですと、弦の振動している様子は、目でも見えますが、空気自身の振動は目では見えません。

でも、もし、パイプ が透明で、中に煙りが入っている・・・としたら、多分こんな風に見えるかもしれませんよ。

 図2

矢印が左右に向いているところは、空気が激しく左右に振動していますので、煙は集まりません。

ところが、ツブツブが濃く描かれているところの空気は、動いていませんので、そこには煙が集まります。

多分、こんな風に見えると思います。


それでは、実際に ブームワッカー を叩いて、音の高さ(ピッチ)を測定してみましょう。

下のデータは、ダイアトニックセット 品番: BWDW の ラ(A) の チューブ を叩いた時の 音を、マイクで拾い、波形分析をしたものです。



音の高さは、 Frequency
442.5 Hz と測定されました。

ラ(A) の チューブ の長さは、約36.3cm (0.363 m)でした。

f = V/2L に、数値を代入して計算してみます。

f 340/0.363=468 Hz と計算されました。

正確には、開口補正というのがあり、音波の波長 (λ ラムダ)  パイプの長さ より長くなっていることを考慮すれば、

実際に測定された、
Frequency 442.5 Hz468 Hz と計算された値は、ほぼ合っていると考えて良いと思います。

実際に、メーカーでブームワッカー を作る時は、ラ(A) の チューブ の長さは、その音の高さが、442 Hz 前後になるように、正確に長さを決めていると思います。

オーケストラなどでチューニングされる ラ(A) 音の高さ(ピッチ)は、442 Hz です。


そう言うことで、 ブームワッカー には、ドレミ・・・に相当する、それぞれ違った長さのチューブが用意されているのです。


一番左端 最低音のドのチューブの長さは 1.28m
一番右端 
最高音のドのチューブの長さは 0.30m

最低音のドの音の望ましい周波数は、C=130.8 Hz ですが、チューブの長さからは、 f 340/1.28=132.8 Hz と計算されました。

この場合も、ほぼ一致してますね。


ブームワッカー と言う楽器は、チューブを叩いて、中の空気を振動させて、その音を出す楽器だったと言う事が分かりました。

ブームワッカー(チューンド・パーカッション・チューブ)は、

パーカッションのように叩いて音を出す楽器、

ドレミ・・・の正確な音階を出すために、
調律されたカラフルなプラスティックチューブ

と言うことになります。

冒頭にも書きましたが、木琴のような楽器かと思ったのですが、実は、そうでは無く、管楽器の仲間だったのでした。


この図は、管楽器の最も一般的な横笛・・・フルート の原理図です。

フルートのような管楽器は、管の長さを変えるのでは無く、明いている穴を塞ぐことで、見かけの管の長さを変えて、違った高さの音を出しています。

フルートの場合は、上の ブームワッカー の場合と同じく、両端が開いた管・・・開管として、長さと音の高さ(ピッチ)の関係が決まります。

すなわち、一方の端は、BLOWHOLE 歌口 または、歌穴。 もう一方の端は、TONEHOLE 開孔 または、全部閉じた時は、管の全長 と言うことになりますので、

管の長さと音の高さ
(ピッチ) の関係は、ブームワッカー の場合と同じです。


ところが、少し違う管楽器も有ります。 この写真を良くご覧になって下さい。


ペルーやハンガリーの民族楽器 Panpipe (パンパイプ)

片方の端は、竹の節が有って、塞がれています。

こういう楽器の、管の長さと音の高さ(ピッチ) の関係は、どうなっているのでしょうか。


 図3

また、同じような図が出て来ました。 この図の場合は、管の一番上の端が、塞がれています。

この図は、一方の端が塞がれた、いわゆる、閉管 の中の空気を振動させた時の、管内の空気柱の振動モード を示しています。

一番左、Tの図の、ピンクの形は、上で述べた、図1両端があいた時の物に大変良く似ていますが、ピンクの波形が、半分しか有りません。

しかし、実際は、管の中の空気は
共振していて、上で述べた、両端があいた時の図1Tと同じ音を出しているのです。

すなわち、一方の端を塞さいだ管・・・閉管 の場合は、 管の長さが半分でも、両端があいた管・・・開管 と同じ音の高さの音になります。

ただし、開管と大きな違いが有ります。

図1開管の場合は、Uの場合は、2倍の高さの音・・・第2倍音。

Vの第3倍音。 Wの第4倍音 がでていることを述べましたが、

図3閉管の場合は、Uの2倍の高さの音・・・第2倍音は、存在しません

Vの第3倍音は有りますが、Wの第4倍音も有りません。 

以下同様、Xの第5倍音は有ります。・・・すなわち、奇数の倍音しか出ないのです。


 図4

上の、開管の場合と同じように、閉管の場合も、こんな風に見えると思います。


管楽器の中で、閉管の挙動となっている物の代表例は・・・クラリネット です。

まろやかな音色は、その倍音の出方から生まれています。 また、フルートとそんなに長さが違わないのに、低い音まで出ていますし、音域の広い楽器です。

これは、一方の端が塞がれた閉管だからです。

上の写真の、ペルーやハンガリーの民族楽器 Panpipe (パンパイプ) も、閉管ですから、楽器の大きさの割に結構低い音域が演奏出来ます。


この写真は、パイプオルガンに使われているパイプを示した物です。 一台のパイプオルガンにも、色々な形の物が使われています。

上の、違った形のパイプは、何れも同じ高さ(ピッチ)の音を出す物ですが、音色を変えるために色々な形が用いられています。

右の4本は、上端は塞がれてない、
開管です。

一番左の1本は、
上端が塞がれた、閉管です。 右の4本と比べ、長さはほぼ半分ですが、音の高さ(ピッチ) は同じです。

そうです、一方の端を塞さいだ管・・・閉管 の場合は、 管の長さが半分でも、両端があいた管・・・開管 と同じ音の高さの音になります。


もう少し、言い換えますと

同じ長さの管の、一方の端を塞さぐと、音の高さは 半分に下がる・・・すなわち、オクターブ下がる・・・

と言うことになります。

優れものの オプションアイテム 

オクタベーターセット 品番: OC8W

は、この原理を旨く使った優れものでした。 なーるほど・・・

チューブの端にプラスティックキャップを嵌めると、何と・・・音が1オクターブ低くなります。

8ケで1セット。 ダイアトニックをベースダイアトニックの音域にすることが出来ます。

ベースダイアトニックに使えば、更に1オクターブ低くなります。  この場合の最低音は、チェロの一番下の C の音 (C=65.4 Hz) と同じ高さ。

そうです。 ダイアトニック 1セット、ベースダイアトニック 2セットと、オクタベーターセットで、3オクターブの音域を演奏できるんです。

これだけ有れば、素晴らしいアンサンブルも楽しめると思います。

ビデオをご覧下さい

Windows Media Player (3,450KB)

それでは、あなたも ブームワッカー を楽しんで下さい。

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 をお読み頂き、有り難う御座いました。

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工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2002/7/17