上で、スティック振動の振動数を実測した目的は、こちらの 表1 で取り上げた13本のチェロ弓の、縦弾性係数 E と 断面2次モーメント
I の数値を検証すること
でした。
それでは、13本のチェロ弓の、縦弾性係数 E と 断面2次モーメント
I の数値を、このページ冒頭の
図8 スティックの振動モード・振動数計測概略図 にある、スティック振動数 f の計算式に代入して、スティック振動数 f を計算してみましょう。
その計算結果は、上の 表2 スティック振動の振動数の実測値と計算値 の
1.25 欄の右に、各弓の1次モード、2次モード、3次モードの振動の振動数の計算値を表示しました。
その計算においては、考え方に一つ修正を加えた。 13本のチェロ弓の、縦弾性係数 E と 断面2次モーメント
I の数値を求める計算において、スティックの太さは 中央
d mid
の一様な太さの棒・・・と仮定して計算したが、
振動を考えた場合は、実際には、先端部にはヘッド部の重さが集中してあり、また、弓元は中央より太くなっているため、弓の両端部に質量がある程度集中していると考えられる。 従って、振動数は、中央
d mid
の一様な太さの棒 の
計算値より低くなる ことが予想される。
そこで、スティック振動数 f の計算において、下記のように、スティック重量を見掛上増加させる 重量係数 ρ という係数を導入した。
その値は、表2 スティック振動の振動数の実測値と計算値 の
1.25 欄にある、1.25
である。
ただし、Carbow と
Carbondix
(いずれも、樹脂の中にカーボン繊維を混在させて成形した弓)
の場合は、 重量係数
1.00
である。
図9 スティックの振動モード・振動数計算式
表2 スティック振動の振動数の実測値と計算値 を見る限り、実測値と計算値は非常によく一致した値を示したことが分かる。
と言うことは、こちらの 表1 で取り上げた13本のチェロ弓の、
縦弾性係数 E と 断面2次モーメント
I の数値
は、
信頼性のある値
であることが分かった。
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