チェロの力学

第1章 弦の張力と固有振動数

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チェロの弦の張力が、4本でどの位あるか計算して見ました。 計算をしたチェロの寸法は下図の物です。


下の図1は弦の張力と振動数との関係を模式図にしたものです。 弦の張力とバネ定数の関係は(2)式で表せます。 弦に質量が無いと仮定した場合、弦に付けられた集中質量mとバネ定数kから、(1)式で固有振動数が計算できます。

弦に質量がある場合は、弦の質量msを加味して、(3)式で固有振動数が計算できます。

m=0 の場合の固有振動数は、(1)と(2)の関係から、(5)式のようになります。

チェロの4本の弦は、下から C,G,D,A に調弦され、それぞれの固有振動数は分かりますので、(5)式において、弦の長さLと弦の質量msが分かれば、それぞれの弦の張力が計算できます。

図1

弦の質量msは、弦の種類によって若干違いがあります。 JARGER と PIRASTRO FLEXOCOR CHROMESTEEL の2種類の弦で、弦の張力を計算して見ました。 弦の質量msは、ナットから駒までの 69cm 部の質量と、後で計算で使う、駒からテールピースまでの 12.5cm 部の質量を、実測値から使用した。

表1 弦の質量 ms 単位:gr

  JARGER FLEXOCOR CHROMESTEEL
  単位長質量 69cm質量 12.5cm質量 単位長質量 69cm質量 12.5cm質量
 C  0.142 9.80 1.78 0.139 9.59 1.74
 G  0.070 4.83 0.88 0.064 4.42 0.80
 D  0.034 2.34 0.43 0.036 2.48 0.45
 A  0.019 1.31 0.24 0.019 1.31 0.24

弦の振動数 ωn=2πf  であるので、(5)式を変形し簡略化すると、

T=0.231*f*f*ms となり、表1の値を代入すると、下記のように弦の張力が計算された。

表2 弦の張力 T 単位:Kg

    JARGER FLEXOCOR CHROMESTEEL
  開放弦の固有振動数 f (Hz) 弦の張力(Kg) 弦の張力(Kg)
 C  66 9.9 9.6
 G  99 10.9 10.0
 D  146.6 11.6 12.3
 A  220 14.6 14.6
  4弦合計値 47Kg 46.5Kg

非常に単純な近似計算ですが、以上で、チェロのネックやテールピースは、約40−50Kg の力で引っ張られている事が分かった。

弦の張力と固有振動数編はこれで終わりです。


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Updated:2008/5/23

First Updated:2005/4/28