チェロの力学

第5章 ウルフキラー (Wolfkiller) の振動計測

★ウルフキラーの振動を分析する

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ウルフキラーの振動の模型

 

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ウルフキラー振動の様子を目で見る・・・

いよいよ、記録された信号の分析に入ります。

 

まずはじめに、表6  VIDEO アイコン  をクリックして、記録された信号を、ビデオ 音  を聴いてみて下さい。

実際の演奏は最低音の C から、第4ポジションの g まで弾いていますが、ウルフキラーは A線より上の音ではほとんど振動していないので、信号の分析は、最低音の C から、開放弦の a までとしています。

 

Lチャンネル (表示画面 の 上段) はウルフキラーの振動信号を 示していますが、振動の振幅が大きく変化しています。  下の  レベルメーター  の振れも大きく変わっています。

これが、ウルフキラーの振動の強さ・・・を示していることになります。  をヘット゜フォンで聴いてみると、Lチャンネル の音は、振動の振幅が大きいところでは聞こえますが、振幅が小さいところではほとんど聞こえません。

(注) Rチャンネル から聞こえている音は、駒の足部にクリップで留めた、 ダイナミックピックアップ が拾った音ですので、ウルフキラーの振動の強さとの相関はありません。

下に示した2つの記録信号分析の例では、二つのチェロ、1986年製 Kreuzinger も、2008年 工房ミネハラ新作のチェロ "Hiroki" も、いずれも、ウルフキラーの振動の振幅が大きくなる音 (正確には、音の範囲) が2箇所あることがわかりました。

 

表6 記録信号分析の例

Cello 記録信号  Adobie Audition 2.0 表示画面
Kreuzinger
"Hiroki"

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上に示した計測方法で、二つのチェロ、Kreuzinger"Hiroki" の、こちらに示した ウルフキラーの振動計測の範囲 で、ウルフキラー振動の強さ を計測しました。

ウルフキラー (Wolfkiller) の取付位置 (Mount Position) l (mm)  は、下表の範囲に移動させてデータを録りました。

Wolfkiller Kreuzinger "Hiroki"
Long 16,19,21,26,31 mm 16,19,21,26,31 mm
Short 22,27,32,37,42 mm 22,27,32,37,42 mm

図25 (再掲載)

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ウルフキラー振動の計測結果

下の 表7 が ウルフキラー振動の強さ の計測結果です。

各音でのウルフキラー振動の強さ の計測方法は、下の  VIDEO アイコン  をクリックして見てください。 各音を数回 連続再生して、 レベルメーター  の振れの強さの デシベル値 (dB) を読み取って計測しています。

(注) デシベル値 (dB) は、音の強さなどを比較する数値で、マイナスの値が小さい程、振動が強い ことを示します。

Kreuzinger, Large, 19mm, Note(e) の例・・・ この画像もクリックしてご覧ください。

  "Hiroki", Short, 32mm, Note(e) の例・・・ この画像もクリックしてご覧ください。

 

図27 ウルフキラー振動の強さ 計測結果・・・ このようなデータは、世界初公開と思っております。

Wolfkiller Kreuzinger "Hiroki"
Long
Short

図27のデータからは、下記のことが事実として読み取れます。

ウルフキラー (ウルフ止メ) 

(1) 1オクターブ低い C 線の D#,E,F,F# 音 辺りと、D 線の d#,e,f,f# 音 辺りで強く振動する。

(2) 取付位置 (Mount Position) l (mm)  が 短くなると、強く振動する音は高い音になってゆく。

すなわち、取付位置を変えると、強く振動する音を変える事が出来る…ということになります。

上記の(2) は、すでに説明した下の図からも明らかですが、

図2 ウルフキラー (Wolfkiller) の取付位置 と 振動数計算値 (再掲載)

上記の(1) のように、ウルフキラー自身の振動数より、1オクターブ低い音のところでも大きく振動する・・・ということは、今回の実験ではじめて分りました。

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この計測結果がどの様な意味を持つか、何故このような挙動をするのか・・・など、次章で詳しく検討してみます。


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工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2008/5/23