チェロの力学

 
ティータイム
 です

チェロの表板と裏板を叩いてみました

red.gif (61 バイト)

すぐ、また、ブレークタイムです。

その間に、工房ミネハラにある4台のチェロの表板と裏板をを叩いて見ましたので、ご覧下さい。

音のファイルも有りますので、是非お聴きください。

叩いた場所は、裏板 4ケ所、 表板 4ケ所で、それぞれ4回叩いています。。 叩いた順番と位置は次のとおりです。

■裏板のセンターバウツ(くびれた部分)の両端近く A部 左A部  、アッパーバウツの中央部 、ロァーバウツの中央部

■表板のセンターバウツ(くびれた部分)の両端近く A部 左A部  、アッパーバウツの指板のすぐわき 、ロァーバウツのテールピースのすぐわき

以上の6ヶ所です。

音のファイルは、この順番で上の写真のように、8個所、それぞれ4回叩いています。

録音の始めに、音程を比較できるように、音叉の、A音(440Hz)が少し録音されています。


上の楽器は、何れも Stradivari です

red.gif (61 バイト)

それでは、お聴きください。 手が滑って、均一に叩けてないところはご容赦下さい。

叩いたときの音程の違いを、凡そ下記のようにまとめて見ました。

  裏板 表板
  A部 A部 A部 左A部
ドイツ製   1986年製 F# F# A A F# F# A? A?
チェロ A  1991年製 F#-G F#-G A A F# & A F# & A A? A?
チェロ B  新作 G G G G
チェロ C  新作 F# F# G#-A G#-A F# F# G#-A G#-A

チェロによって、少しずつ違いがありました。

red.gif (61 バイト)

次に、上の表の、色の付いている部分の、一発目の音だけを、拡大して調べて見ました。

ドイツ製 1986年製 

裏板 A部 

綺麗な振動波形で、余韻も長く続いている。 振動数は、約180Hz (F#に近い)

裏板 B部 

綺麗な振動波形で、余韻も長く続いている。 振動数は、約220Hz (A)

この楽器は、大変よく鳴る楽器ですが、ウルフトーンが強く出ます。


チェロ A  1991年製

余韻も比較的長く続いている。 振動数は、約190Hz (F#とGの中間)

この楽器も、大変よく鳴る楽器ですが、ウルフトーンが強く出ます。


チェロ B  新作

余韻は余り長く続かない。(減衰は大きい) 振動数は、約160Hz (Eに近い)

この楽器は、まだセットアップしてないので、ウルフトーンについては未だ分からない。 ただし、同一ロット品は、比較的よく鳴る楽器。


チェロ C  新作

余韻は、まずまず長く、綺麗な波形。(減衰は比較的小さい) 振動数は、約180Hz (F#に近い)

結構良く鳴る楽器。ウルフトーンは、F#音に出る。

red.gif (61 バイト)

まとめ

裏板 A部、 表板 A部 からは、かなり確かな音程感のある音が出ます。 楽器によって、その音の周波数は少し違いますが、概ね、F#音ないしは、その近くの上下の振動数です。

■叩いた時の音が、澄んでいて、振動が長続きする(減衰が少ない)楽器の方が、多分良く鳴る楽器でしょう。 しかし、反面、 ウルフトーンも強く出ます。

(注) ドイツ製 1986年製 は、 Kreuzinger ですが、私の 1988年のメモには、裏板 A部 のタップトーン(叩いた時の音)は、F音 という記録が残っています。 10数年の間に、若干その音が高くなったことが分かります。 これは、10数年という、楽器にとっては短い時間ですが、その間に木の性質が変化し、減衰が減って、半音程度高い周波数の音にかわった物と考えられます。 事実、当時より、今の方がずっと弾きやすく、よく鳴るようになりました。

red.gif (61 バイト)

さて、貴方のチェロは、この8ヶ所からどんな音が聞こえますか??? (弦は振動しないように、抑えて叩いて下さい)

次回は、レスポンスの良い楽器にまつわりつく、 ウルフトーンの問題に近づいて行きます。 ご期待ください。

ウルフトーンは、この、叩いて出た音との関係が大変重要となります。


前ページ 次ページ

目次に戻る

menu.gif (338 バイト) フロントページ

■Copyright (c) Lab Minehara, All rights reserved.  このページに掲載の全てのコンテンツ (記事、画像データ・数値データなど) の無断転載 ・公開等はお断りします。


工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2008/5/23

First Updated:2000/7/11