ギターの力学 総まとめ編 その3

ここでは、フレットを押さえても、音程が狂わない補正方法・・・を考えます

ここが、  ミネハラ スーパーチューンシステム  TM  の本題です

red.gif (61 バイト)

アコースティックギター弦には、下の図のように色々な構造のものが使われている事は説明済みです。
開放弦がどのような応力(張力)で張られているか・・・その値によって、フレットを押さえた時に、どの程度 音程が狂い易いか・・・を示すKe と言う数値がある事も説明しました。

それなら、どうしたら音程が狂いを無くせるか・・と言うことが、ここからの話になります。


 

red.gif (61 バイト)

 

始めに、サドル補正 を考えてみましょう・・・これは、オクターブ調整 と呼ばれ、普通のギターで既に行われている方法です。

計算結果から分かったもの

(1) フレットを押さえると、どのポジションでも、音程は上がってしまう・・・

(2) どの弦も、第12フレット側が 音程が上がってしまう・・・ 

(3) 音程が上がってしまう程度は、弦のゲージに大きく影響をうける・・・

を思い出して下さい。

どの弦も、第12フレット が一番音程が上がってしまっていたと思います。

これを直すのが、アコースティックギターの傾いたサドルです。

 

サドル補正 の考え方を復習します。 下の図を思い出してください。

 

サドル補正量 の計算方法を示します。

サドル の位置を、当初、計算に使った、基準スケール長 より、ΔL だけ、長い位置に変え 、 そうすると、第12フレット を押さえた時の弦の長さは、ΔL だけ長くなり、音は低くなります。

 

ギターの絵にすると、下図のようなものです。

 

実際の計算例を示します。

サドルの補正を行わない状態で、第6弦 の 第12フレット では、20.7 セント も狂っていたのですが、サドル位置を、開放弦の長さが 約 5.6 mm長くなる位置に補正することによって、第12での音程の狂いは、0.2セント (ほぼゼロ) に小さくなる・・・と言う計算結果が得られました。

 

このような計算を、全部の弦で行った結果が下の表です。 このような計算は、パソコン上で全て行います。

この計算結果からは、下図のような補正量のサドルをインストールすれば良い・・・と言うことが分かります。

このサドルの場合、弦の12フレットで、ハーモニックス 出し、次に、第12フレットを押さえて音をだし、その音が、ハーモニックス と同じ音の高さになるように、サドルの側面を削って、弦の載る位置を微調整します。 この調整を、オクターブ調整 と言います。

この方法では、上の図のように、弦の載る位置は、ガタガタ になってくると思います。 これで、第12フレット を押さえた時、音程が上がりすぎてしまう現象は、驚くほど抑える事が出来ます。

 

それにより、各弦・各フレットでの音程の狂いは、下図のようなものになります。

 

中には、下の例のように、サドルを大きく傾けて、弦長を長くして、オクターブ調整 をしている例もありますが、
この場合は、特定のポジションで、
になってしまうところが出てしまいます。

 

これで、オクターブ調整 は完璧に近いのですが・・・

 

サドル補正後の音程の狂いは、相当小さくなりましたが
 

(1) 第12フレット の音程の狂いは、全くなくなりました。

(2) 全体としても、音程の狂いは、随分 小さくなりました。

(3) でも、ローポジションになるにつれて、狂いが大きくなる。 特に、第1フレットは、無視できないほど、狂っています

 

ポイント

弦高調整 や サドル調整 (コンペンセイテッドサドル)は、ギターの正確なイントネーションを 確保するうえで、最低限必要。

ただし、それだけでは、満足な状態は望めない。

通常のアコースティックギターでは、ここまで しか調整されていないのです。

サドル位置の補正 も、巾 3mm 程度のサドルの上面を削って調節しているに過ぎませんので、第12フレットやその近辺の音程を完璧に合わせる事は、難しい話です。
従って、上のグラフの、
サドル補正後の音程の狂い よりも、実際はもっと大きな狂いがででしまうのが普通です。

こんなギターになっている筈です。

ここから先が、いよいよ、

Minehara Super Tune System  TM  の真髄


Patented   (特許第4383272)

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ナット
は、何故、補正しなくて良いのか???・・・

サドル位置を補正して、フレット中央部の、オクターブ調整 を行っているのに、弦の反対側の端である、ナットはそのまま・・・それは、理にかなっているのでしょうか。

クラシックギターの不思議 では、Domingo Esteso (1925年作) や Jose Ramirez V(1965年作) が、

何れのギターも、第1フレットの寸法 を、平均律で計算 される値より、短く設定 していることを説明しました。

The distance between the nut and the first fret are 1% to 1.7% shorter than the "Rule of Eighteen" standard.

この辺が、名工たちが作ったギターの 音律を正しくする秘密 では無いか??・・・といいましたが、

どうも、それは本当のようです。


第1フレットの寸法が、平均律で計算 される値より、短く設定されている・・・と言うのは、どういうことでしょうか。

この写真をご覧下さい。
従来のナットの直ぐそばに、第1フレットまでの寸法を短縮させる、
ストリングピロー と言うパーツをおきます。

(注) ストリングピロー と チューンナットは、同じものを指します。

 

下の図を思い出して下さい。

 

 

ギターの絵にすると、下図のようなものです。

これは、 平均律で計算されるフレットに おいて、ナットと第1フレットの寸法 だけを、ΔN だけ、短くしてしまおう・・・という 考えです。

 

ナットと第1フレットの寸法 を、ΔN だけ、短くすると、どういうことになるのでしょうか。

 

簡単に分かることは、第1フレットを押さえた場合、開放弦の音に対して、半音上がる割合が小さくなる・・・と言うことです。
とすれば、第1フレットの音が、上がり過ぎてしまう事は無くなるはずです。
第1フレットの音が正しければ、次の、  第2フレットの音も、正しくなるだろう・・・と考えられます。

 

第12フレットの、オクターブ調整 は、今までとおなじように、サドル位置を補正してやれば、正しく、第12フレットの音程は調整できます。

 

これが出来れば、ローポジションも、ハイポジションも、音程の狂いの無いギターになるはずだ・・・と考えられます。

これで、こんなギターにな る筈です。

ここで、とても大切なことが一つ有ります。

ポイント

ナットと第1フレットの寸法を、ΔN だけ、短くする・・・ といっても、6本の弦は全てゲージが違います。

その結果は既にご理解いただけたと思いますが、 Ke と言う値 ひずみ当たりの振動数上昇係数 (弦係数) は違っています。

従って、

ΔN の値は、弦毎に変えなければ、意味が無い・・・と言うことです。

そこで、このような形の物が必要になります。

ストリングピロー TM

本当に音程の狂い が小さくなるか・・・ストリングピローTM 使用時の、音程の狂い 計算で求めてみます

ここで、若干の注意が必要です。 下記をご覧下さい。

 

シミュレーション計算の結果を次に示します。

上の計算結果は、例えば、第6弦のナット補正量 ΔN は 2.8mm、 その時の、サドル補正量 ΔL は 2.8mm が望ましい・・・と言うことを言っています。

 

従って、ストリングピロー TM や、オプションの  オフセットナット   TM を使った場合も、サドルの位置 を正確に補正することが必要です。


ストリングピロー TM


  オフセットナット   TM  Permanent Setup  (オプション)

 

サドル位置の補正 ΔL を正確にチューニングするために、下の写真のような、オフセットサドル を使用します。

このオフセットサドル を使用すれば、サドル溝の巾を超えた位置でも弦を載せることが可能で、正確な オクターブ調整 が可能となります。

 

オフセットサドル は、一体型の構成が可能です。


オフセットサドル
TM 搭載例


左がオフセットサドル 右は、従来タイプのサドル

 

これによって、Minehara Super Tune System  TM  は、今のギターに何ら加工を加えることなくインストール出来るのです。

ただし、 オフセットナット   TM  Permanent Setup  (オプション) は、一部、加工が必要です。

 

本当に音程の狂い が小さくなったか・・・に興味があると思いますので、それをご紹介します。(シミュレーション結果)

如何ですか。


弦のゲージと補正量の関係・・・これは、一事例です。

D'Addario EJ16  Phosphor Bronze   LIGHT GAUGE の、補正量の関係  Scale Length : 645 mm

#

Note

弦のゲージ
(inch)

弦の外径
(mm)

芯線径
(inch)

 Minehara Super Tune System  TM

(参考)
従来の
サドルのみの補正の場合
ΔL (mm)
 

ストリングピロー位置
ΔN (mm)

サドル位置の補正量
ΔL (mm)

 1

E

Silvered Steel

 .012

0.30

.012

0.6

0.6

1.2

 2

B

Silvered Steel

 .016

0.41

.016

1.6

1.6

3.1

 3

G

Bronze Wound

 .024

0.61

.013

0.8

0.8

1.6

 4

D

Bronze Wound

 .032

0.81

.015

1.3

1.4

2.7

 5

A

Bronze Wound

 .042

1.07

.016

1.8

2.0

3.8

 6

E

Bronze Wound

 .053

1.35

.017

2.8

2.8

5.6

 

下の サドルストリングピロー の補正寸法 をご覧になって下さい。

従来のサドル補正 の場合に比べて、ストリングピロー を用いた場合は、従来の補正量を、サドルストリングピロー 両方で分かち合って補正が行われたことがわかります。

ポイント

これが、ハイポジション も、ローポジション も、両方とも 音程の狂い を抑える秘訣だったのです。

 

従来のサドル補正の例

 

従来は、

サドルだけで

補正していたが

arrow.gif (4190 バイト)

 MTS  では

弦の両端で

補正します

サドルストリングピロー の補正寸法

この図を見て頂いてもお分かりと思いますが、従来、サドルだけで音程の狂いを補正していたときは、第6弦は、第1弦に対して大きく弦長を伸ばしていました。 その結果、サドルは大きく傾けて取り付けられていたのです。
ストリングピロー を使うことによっても、サドルでの弦長の補正は必要ですが、サドル側での補正の量は、ストリングピロー での補正の分だけ、小さな値ですむことになります。

サドルストリングピロー 両方で分かち合って補正する・・・これが、ナットに近いローポジションの音程も、フレットの真ん中付近・・・すなわち、第12フレット前後のハイポジションの音程も、両方とも正しい音程にする秘訣だったのです。

しかしながら、第6弦の弦の載る位置が、第1弦の弦の載る位置より前になる・・・なんて言う事は、絶対に有り得ないのです。


ストリングピロー を使うことで、音程の狂いは、識別不可能な位い、小さくなりました。

一説には、人の耳が、識別できる音程の違いは、6 CENT程度だ・・・とする見解も有りますが、 (注) 2 CENT と言う説も有ります。

そうだとすれば、今回、ストリングピロー を使うことで、音程の狂い は、上のグラフのように、最大の狂いを示す、第6弦の第1フレットでも、1.3 CENT です。
もう、狂いは、全く識別出来ない程度の小さなものになったことを、このデータは示しています。


 

ギターの力学 で、ずっと計算してきたものは、弦を押さえた時、下記の図のように、弦がフレットに当たるまで押さえた寸法で、全ての計算をしています。

従って、

弦を指板まで、強く押さえつけると、弦の音程は、計算値より、もっと上がってしまうことは、事実です。

そのような、パワフルな演奏を望む場合は、その量を見込んで、ストリングピロー  サドル位置を補正 すれば、ピッタリの音程のギターに調整することは可能です。

 

音程の狂いは、 目で見ても、こんなに小さくなりました。

 Minehara Super Tune System  TM  で、チューナップしたドレッドノートギター と、何もしていない ドレッドノートギター の音程の差を、チューナーで測定し、 ビデオに撮りましたので、ご覧下さい。 下の表の、 ビデオをクリックしてご覧下さい。

 

貴方のギターは、どちらのギターに近いですか。

 

何もしていない
ドレッドノートギター

 Minehara Super Tune System  

チューナップギター

一番下の E (ミ)から、

上のG(ソ)までの、各音のピッチ

第12フレットのピッチ

第1ポジションのコードEのピッチ

(下の図の E コード)

上の表の、 ビデオをご覧頂けば、違いは、一目瞭然と思いますが、若干の補足を加えさせて頂きます。

 

何もしていない ドレッドノートギター

 Minehara Super Tune System  チューナップギター

一番下の E (ミ)から、
上のG(ソ)までの、各音のピッチ

  • 第2弦から第6弦は、フレットを押さえた音が、数セントから十数セント上がってしまっている。 (注)

  • 開放弦になると、音程が下がったように聴こえる。(本来は、これが正しいピッチなのに)

  • 開放弦も、押さえた音も、ピッチの狂いは、数セント以内に収まっている。

  • 自然なスケールに聴こえる。

第12フレットのピッチ

  • 開放弦、第12フレットのハーモニックス、第12フレットを押さえた音・・・の順で鳴らしていますが、第1弦以外は、フレットを押さえると、音程が相当上がってしまう。

  • 開放弦、第12フレットのハーモニックス、第12フレットを押さえた音・・・の順で鳴らしていますが、第12フレットを押さえても、音程の上昇は殆ど無い。
    ほぼ、完璧なオクターブ調整が出来ている。

第1ポジションのコード E のピッチ

  • 第5弦のBは、約15セント、第4弦のEは、約10セント、第3弦のG#は、約10セント、上がってしまっている

  • コード E は、唸りも混じった濁った響き

  • 第5弦のBは、第4弦のEは、第3弦のG#ともに、弦を押さえても、音程の上昇は殆ど無い。

  • コード E は、澄んだ響き。唸りも殆ど気にならない

(注) セント は、平均律の半音を100等分した値。 すなわち、半音は、100 セント

 

音程の狂いは、 聴き比べれても、違いは歴然

第1ポジションのコード E  を鳴らしています。 この二つの Sound を、お聴きになって下さい。

A   B

どちらが、 Minehara Super Tune System  TM  で、チューナップしたドレッドノートギター かは、直ぐにお分かりいただけると思います。

ポイント

Minehara Super Tune System  TM は、

ギターと言うフレット楽器の持つ本質的な弱点である、イントネーションの狂い を、ギターの弦高、使用弦のゲージに対応して、ミニマム に設定できる能力を持っている、

と言うことになります。


これが


ストリングピロー
TM

工房ミネハラ  では、ストリングピロー TM と サドル位置補正用 パーツ のオフセットサドル TM を使ったギターセットアップサービスを、

 Minehara Super Tune System  TM  として、開始 しています。

こちらをご覧下さい。

貴方のギターは、 Minehara Super Tune System  TM  で、こんなギターに変身します

 

これで、貴方のギターは、 極限のピッチ  に近づきます。 詳しくは、こちらのページもご覧ください。

 

手作り・・・貴方も出来る MTS


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 ミネハラ スーパーチューンシステム キット

こちらをご覧下さい


Patented  
(特許第4383272)

 ミネハラ スーパーチューンシステム


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Mineo Harada

2020/5/10

Updated:2010/12/8

First Updated:2004/3/16