ギターボディー 振動の力学 (3)

 第3章 音の波形と周波数成分

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 前章で は 音の強さの違い  が、表板(Top) や 裏板(Back)の共振周波数と関係している・・・と言う事が分かりました。

1台のギターの中で、何故このような 音の強さ の違いが出るのか・・・それを、この章で探ってみましょう 

このギターの

表板Top)  共振周波数は、

 107 Hz---G#2-A2   205 Hz---G#3   371 Hz---F#4   441 Hz---A4  

裏板Back)  共振周波数は、

 97 Hz---G2   215 Hz---G#3-A3   280 Hz---C#4   398 Hz---G4  

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 でも、大きい音 なのに、音に余韻がなく、「ぼそっ」 と終わってしまう G#3 のような音があるのでしょうか・・・ 

 

これが、大きな疑問点でした。


音の波形 をもう少し詳しく見てみましょう  何か、違いが分かるはずです。

始めに、この をご覧下さい。

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このビデオ映像は、音楽編集のソフト Adobie Audition 2.0 で、 #4  弦の、この の  G#3  と  C4  の音を、連続再生した時の、音の波形を 周波数分析 したものです。

小さな映像ですので、画面表示の大きさを、200% か、全画面表示 にしてご覧いただくと、少しボケますが、動きがご覧いただけるとおもいます。

 

二つのウインドウが開いているとおもいますが、左上のウインドウは、音の波形 を再生している様子。 右下のウインドウは、その音に含まれている 周波数成分 を示したものです。

 

 G#3  と  C4  の二つ音の、鳴りかたの違い や 周波数成分 の違いにお気付きでしょうか。

 

始めの、 G#3  の音は、余韻の辺りにになると、音が詰まった感じになり、1オクターブ高い音に聴こえませんか。

 

二番目の、 C4  の音は、余韻の部分も、芯の確りした、確かな音で鳴っている・・・と思います。

 

 この 二つの音の 周波数成分 を、目で確認してみましょう 

 

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始めは、 G#3  の音の、 ピッキング直後  の 周波数成分 です。 これが、下の画像です。

 G#3  の音の  基本音の周波数成分  にピークが現れています。 周波数成分 には、 倍音 も沢山現れており、瞬間的には、強い音 である事が良く分かります。

 

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次は、 G#3  の音の、 余韻部分  の 周波数成分 です。 これが、下の画像です。

 G#3  の音の  基本音の周波数成分  が全く消えてしまっています。  ちょっと、ちょっと・・・問題  です。

2倍音 は、僅かに強く残っていますが、それより高い倍音成分も、やや減少気味です。

 

こうなってくると、 基本音  の感じが薄れ、 音が詰まった・・・余韻の無い音  に聴こえて来るとおもいます。  G#3  の音には、何らかの問題が有ります。

 


さて、余韻 が良く響いている  C4  の音を見て見ましょう。

 C4  の音の、 ピッキング直後  の 周波数成分 です。 これが、下の画像です。

 C4  の音の  基本音の周波数成分  にピークが現れています。 周波数成分 には、 倍音 も沢山現れており、 綺麗に響く良い音 である事が良く分かります。

 

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次は、 C4  の音の、 余韻部分  の 周波数成分 です。 これが、下の画像です。

 C4  の音は  基本音の周波数成分  が消えてしまう事はありません。

周波数成分 には、 2倍音以上の成分も残っており、何時までも、綺麗に響く良い音 である事が良く分かります。

 C4  の音には、全く問題点は感じられません。


以上のことを念頭に、この を、もう一度ご覧んになって下さい。 ビデオ映像でも、良く分かるとおもいます。


音の波形 に含まれる 周波数成分 とは、なんでしょうか  

ギターだけでなく、楽器の音には  基本音  のほかに、沢山の  倍音  が含まれていることは、ご存知のこととおもいます。

 

詳しくは、こちらで解説しておりますので、ご覧下さい。

 

倍音が乏しい音・・・それは、本来の楽器の響きでなく、空ろな音になってしまいます。

ですから、皆さんは楽器を選ぶときに、 倍音のよく鳴る楽器  を求められるとおもいます。 折角良い楽器を手にしたのに、中には、 倍音がよく出ない音がある・・・ これは、ちょっと残念な気がしませんか。

 

 楽器の音の倍音は、何処から出ているのでしょうか・・・ 

 

ギターで、ハーモニックス演奏をされる方なら、常識的なことですが、倍音は 弦が弾かれると、1本の弦の中で  2倍、3倍、4倍・・・と言う振動数で、一本の弦が振動しているのが基本です。


  余談ですが、これに関する問題が、2007年の大学入試、共通1次試験にも出題されましたね。

 

僅かな倍音の振動を、良く響く音にして空気中に放出するために、弦楽器には表板や側板・裏板から構成される共鳴胴 が必ず有ります。

 

前章では、表板や側板・裏板から構成される共鳴胴 には、 固有の共振周波数  がある・・・と言う事が分かりましたが、

例えば、

表板Top)  共振周波数は、 107 Hz---G#2-A2   205 Hz---G#3   371 Hz---F#4   441 Hz---A4

 

裏板Back)  共振周波数は、 97 Hz---G2   215 Hz---G#3-A3   280 Hz---C#4   398 Hz---G4

これ等の音以外の弦が弾かれたときでも、表板や側板・裏板から構成される共鳴胴 は、振動します。 こちらの実験でお分かりいただけるとおもいます。

 

 この絵を思い出して下さい。

 

弦楽器のような 表板や側板・裏板から構成される共鳴胴 を持つ楽器は、

 弦の振動  に依って、表板や側板・裏板から構成される共鳴胴 が 弦の  基本音  や  倍音  の周波数で強制的に振動させられている・・・と言えます。

 

この場合、表板や側板・裏板から構成される共鳴胴 に、 固有の共振周波数  が有ると、その音は 大きな音で鳴り、  固有の共振周波数  で無い音は、そこそこの強さで鳴る・・・と言う事になります。

 

それなら、 固有の共振周波数  が沢山ある楽器の方が、良く鳴る楽器 と言えるでしょうか。

 

 ピン・ポン・・・ある意味で、正解とおもいます。

 

 でも、その事は本当でしょうか・・・ 

このギターには、

 

表板Top)  共振周波数は、 107 Hz---G#2-A2   205 Hz---G#3   371 Hz---F#4   441 Hz---A4  実際は、もっと上の周波数も有りますが、省略しています。

 

裏板Back)  共振周波数は、 97 Hz---G2   215 Hz---G#3-A3   280 Hz---C#4   398 Hz---G4  実際は、もっと上の周波数も有りますが、省略しています。

 

この章の始めに検討した  #4  弦の  G#3  の音のことを、もう一度思い出して下さい。 このことは、このギターの

 

表板裏板 に、 107 Hz---G#2-A2   205 Hz---G#3   215 Hz---G#3-A3  などの  固有の共振周波数  が有ることと、何らかの関係があるのでしょうか。

 


 固有の共振周波数  が沢山ある楽器の方が、良く鳴る楽器 と言えるでしょうか。
 

 

何となく、まだ、分かったような・・・、分からないような・・・状況ですね。 


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Updated:2007/1/26