ギターボディー 振動の力学 (6)

 第6章 ギターの共振モードを探る

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 ここまでは、ギターの音の波形 や 表板の振動の強さ・弦の振動の様子 などを見てきました 

 

では、いよいよ、ギター表板や裏板は、どのように振動しているか・・・それを目で確認してみることにしましょう。

 


ギターをスピーカーで鳴らしてみました  ギターのボディーの振動の様子が、目で見えました・・・凄い・・・

これは、何をしているものでしょうか

 


(Top) (約6分半) (Back) (約6分半)

 

始めに、ビデオ映像 をご覧下さい。 サイズが小さいので、画面表示の大きさを、200% か、全画面表示 にしてご覧いただくと、少しボケますが、動きがご覧いただけるとおもいます。

 

上の写真のように、ギターを2点で水平な状態に支えて置きます。 サウンドホールから 5cm程度離した位置に、小型スピーカーを配置します。 表板のばあいは、スピーカーは上から吊るして置きます。

弦は、鳴らないように、テープなどで止めておきます。

 

 この写真は、何だとおもいますか・・・のところで、 やったのと同じように、

ギターの表板 (Top)や裏板 (Back) の上に、良質の良く乾燥した 紅茶の葉 (TWININGS CEYLON ORANGE PEKOE TEA が粒が細かく、良好でした) を 満遍なく撒いた状態です。

 

この状態で、パワーアンプに繋がれたスピーカーを、周波数を変えられる信号発生器の信号で鳴らします。

信号発生器の周波数を、低い周波数から、徐々に高い周波数に変えて行くと、ある周波数で、紅茶の葉 が激しく踊り出すところが有ります。 その状態を1分程度保つと、紅茶の葉 が集まって、縞模様を形成します。

 

すなわち、ギターの表板 (Top)や裏板 (Back) の激しく振動している部分の紅茶の葉 は吹き飛んでしまい、振動が小さいか、振動していない部分に集まって縞模様を形成しているのです。

 

この時の信号発生器の周波数を、ストロボチューナーなどで読み取ると、どの周波数の時に、ギターの表板 (Top)や裏板 (Back) がどのように振動しているかが分かる・・・と言う計測法です。

 


スピーカーを鳴らす前暫くたって、縞模様が形成された状態


さて、何が見えたでしょうか・・・・・・もう一度、ビデオ映像 をご覧んになって、下記を検証してみて下さい。

 表板 や 裏板 が 激しく振動する周波数が分かりました・・・  万歳・・・

表板、裏板とものに、#6弦の開放弦 E2 の周波数から、#1弦の#15フレットの G5 程度の周波数まで探ってみました。

計測された周波数との紅茶の葉 の様子(縞模様)を、表にまとめてみました。 中の写真をクリックすると、 大きくご覧いただけます。

 表板 


G#2

G#3

G#4

F#5

 

 裏板 


G2


C3


F#3


G3


A3


C#4


G4

 

表の色の同じところは、表板、裏板がほぼ同じ周波数である事を示しています。

この状況から分かった事を、大まかに整理して見ましょう。

ここで、縞模様 がはっきりと現れる周波数を、 共振点  と呼びます。 実際は、音程で表示しています。


実測した周波数の範囲で、表板(Top) の  共振点  は、整数の倍数関係がはっきりと見られる。

実測した周波数の範囲で、裏板(Back) の  共振点  にも、整数の倍数関係もあると考えられるが、倍数関係でないところにも  共振点  が見られる。

裏板の  F#3  や  G3  に は、縞模様 はなく、紅茶の葉 が全て吹き飛んでいて、非常に強い振動が発生していると考えられる。 

表板の  G#3  の  共振点  では、表板中央部・ブリッジ周辺の紅茶の葉 が全て吹き飛んでいて、非常に強い振動が発生していると考えられる。


「ギターボディー 振動の力学」 一番初めのデータと比較してみましょう・・・

 

音の強さ(dB) の大きい音は、表板(Top) が大きく振動している・・・

 

と言う事だったと思います。

お聴きください

すなわち、ビデオ映像 からも分かるように、

 

表板(Top)  共振点  近くの音が、ギターから大きく出ている・・・

 

と言えます。 ・・・なーんだ、そんな事当たり前じゃないですか・・・そうですね。 でも、この目で見えたのですから、そういわないで、もっと先まで読んでみて下さい。

 

 共振点  の 振動モード を このように考えましょう・・・ 


下のアニメーションは、クリックすると大きくご覧いただけます。 アニメーションに動きがない場合は、ブラウザーの<更新>ボタンを押して下さい。

アニメーション モード名 振動の様子 このギターの Top 共振点  
モード (0) サウンドホール辺りを最大にして、表板(Top)が上下に激しく振動する G#2
モード (0,0) 表板中央部・ブリッジ辺りを最大にして、表板(Top)が上下に激しく振動する G#3
モード (1,0) ブリッジを境にして、表板(Top)の上半分と下半分が交互に上下に振動する G#4

高次のモード 表板(Top)の特定の部分が振動する F#5 など

 

アニメーションで、赤い部分は、出っ張る部分青い部分は、引っ込んでいる部分 を意味します。

それらが交互に振動している様子をアニメーションで示した積もりです。

 

赤い部分や、青い部分の色の一番濃い位置が、最も大きく振動しているところで、「腹」と呼ばれます。 外周部やブリッジ部を通る太い線の部分は、振動してない位置で「節」と呼ばれます。

 

 ギター表板(Top)には、共振点がある事が分かりました 

・・・実際には、裏板にも幾つかの 共振点 は有りますが、このテーマの本筋である、「音の強さ・音の性質」に大きく関与する物は、表板が支配的のようですので、ここから先は、主に、表板について話を進めたいとおもいます。

 

でも、

 

モード (0)、モード (0,0)、モード (1,0) などの

 

共振点は、何故現れるのでしょうか・・・それは、良い事なのでしょうか・・・まだ疑問は残っています・・・よね。


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ギターボディー 振動の力学 続き(7)

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Updated:2007/2/3