ハープの力学

 第1章
 ハープのパーツと構造

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ハープには色々な形の物が有りますが、基本的なパーツと構造は下図ようなの物です。

ハープを、弦の数や演奏形態(床置きか膝上か)で分類すると、下図1のようになります。小型ハープの場合、弦の数は多少変わることもあるようです。

また、音域は、使用する弦などによっても、多少変わります。(例えば、巻き線弦を使用して、音程を下げる)

図1

NON-PEDAL HARPLAP HARP (アイリッシュハープ、フォークハープ、ケルティックハープ などと呼ばれるもの) では、ネックの形から、下図2のように分類される事もあります。

胴のサイズが同じ位のハープの場合、HIGH HEAD HARP や GOTHIC TYPE  と LOW HEAD HARP では、使用する弦のケージ(太さ)が変わり、弦の張力なども変わりますので、おのずと音色に違いが出ます。

弦の張力により、音色や音のメリハリは大きく変わります。 ここ、ハープの力学 では、後で弦の張力の解析を行います。

図2

弦の張力は、小型の22弦ラップハープの場合でも、22本の合計で、200Kg前後の大きな力になっています。

従って、この張力に耐えるためにハープに使用される材料や構造には様々な工夫が施されています。

大きな力を受ける SOUND BOARD は、スプルースの単板の場合、低音弦の中央部で6−7mm程度の厚み、高音部の薄い部分で2−3mm程度の厚みの材料が使われます。

多くの場合、SOUND BOARD には、Birch Ply (かばの木の合板) が使われています。 航空ベニヤ とも呼ばれていますが、飛行機の胴体や羽を作るために定められた厳しい品質規格で作られた合板で、薄くても、高強度の材料です。
SOUND BOARD を薄く作れますので、明るい音の楽器を作れます。

SOUND BOARD の中央部には、STRING RIB と言う、補強の部材が接着されていて、その部分に開けられた穴に弦を胴の中から通します。

弦のもう一方の端は、ネックにある TUNING PIN に巻きつけられ、巻き上げられます。 TUNING PIN には、図3のように2種類あります。 TAPERED PIN はバイオリンの糸巻きのようにテーパーになったピンをネックのテーパー穴に押し込むことによって止まります。 弦は先端に開いた穴に通して巻きます。

ZITHER PIN はネックに開けた穴に打ち込んであります。 弦はピンの真中に開いた穴に通して巻きます。 ZITHER PIN の場合でも、ピンを打ち込む下穴の径をきちっと加工することによって、決して緩むことは有りません。

知って得するチューニングピンの知識

ZITHER PIN には、ピンとネックの摩擦力を保つために、細かな螺旋状筋が付いています。ピンを右に回すと、ピンが中に入ってゆくような螺旋になっています。 弦が切れて、張り替えるときは、弦を張る前に、一旦、ピンを1−2回左方向に回して、ピンを少し抜いた状態にしてから、改めて弦を張ると、ピンが引っ込みすぎてしまう事がなくなります。

TAPERED PIN先細り穴先細りピンを差し込んで、ピンNECKの摩擦力で弦の張力を保つ構造に作られています。 このピンの特徴は、「柔らかい力で回せて、正確なチューニングができる」ところにあります。 弦を張り替える時も、容易に回すことができ、最後にちょっとだけ押し込み気味に回せば、摩擦力でぴたっと止まります。

BRIDGE PIN (GUIDE PIN) には、ネックから少し離れた位置に弦が引掛けられますので、図4に示すように、弦の張力によってネックを倒そうとするトルク (モーメント)が作用します。

ネックや支柱、胴には、ウォールナットやメイプル、桜などの材料が使われます。

また、大きなモーメント をうけ、しかも、TUNING PIN を確りと保持し、数十年にわたって(半永久的に)クラックが入らなくする為に、ネックには木材の繊維方向をクロスさせた積層材が使用される事が一般的です。 

図4

弦の張力によってネックを倒そうとするトルク (モーメント) に対して、接合の強度を確保するために、NECK  と PILLAR の接合部は、TENON JOINT (ほぞ組) が使用されます。

また、接合部に図5のような OVERLAY を接着して、接合強度を増しています。 OVERLAY は、単なる飾りではなかったのです。

図5

ネックが胴に載っている JOINT の部分には、その部分が胴にリジッドに接合されていると、ネックを下に曲げよおとする力が作用する時に、JOINT の部分にも モーメントが加わります。 そのため、剥がれが起こらないよう、ネジなどで固定されている物も有ります。

JOINT の部分に モーメントが加わら無いようにする構造としては、 図6 の 関節ジョイント のように、KNEE BLOCK が、胴の上で自由に回転出来るようにし、単にネックが胴に載っているだけの構造にしたものも有ります。 この場合、ずれ防止のために、ピンが埋め込まれていて、 KNEE BLOCK は、弦の張力で胴の上に確りと固定されます。

PILLAR の下の部分は、太いボルトや長い木ネジで、BASE に固定されています。

図6


  関節ジョイント

ハープに張られる弦には、色々な種類がありますが、フォークハープ の場合、ナイロン弦が最も一般的です。 ワイヤーストリングを使用するハープの場合は、弦の間隔 (String Spacing) は、ナイロンやガット弦のハープより若干狭く設計されています。 一つのハープで、ワイヤーストリングとナイロン弦のどちらでも使用出来るものも有ります。

表1に、ナイロン・ガット弦の種類を示します。

表1

単線ナイロン弦

最も一般的な弦です

巻き線ナイロン弦

ナイロン芯線にナイロンの細い巻き線を施した弦で、
小型ハープの低音弦に使用されます

ガット弦

豊かな、暖かい響きの弦ですが、高価です
また、湿気で切れ易いことも、注意が要ります

金属コァ弦

金属の芯線に繊維を巻き、その上に銅箔やナイロンの巻き線を施した弦で、
大型ハープの低音弦に使用されます。

小型のフォークハープ の一般的な弦間隔 (String Spacing) は、高音弦で 1/2" (約13mm) で、低音弦の方はそれより徐々に広くなっています。 ワイヤーストリング専用のハープの場合、10mm前後の弦間隔のものもあります。

表2に、代表例を示します。

表2 小型のフォークハープ の一般的な弦間隔 (String Spacing)

  弦間隔 (String Spacing)  単位:mm
低音域 中音域 高音域
Musicmaker's Kits 22弦 Minstrel Lap Harp 15.0 14.5 14.0
22弦 Sheperd's Lap Harp 15.0 14.5 14.0
26弦 Limerick Lap Harp 15.0 14.5 14.0
31弦 Gothic Harp 14.8 14.2 13.0
33弦 Voyageur Harp 15.0 15.0 15.0
Stoney End 22弦 Eve Lap Harp 14.0 13.0 13.0
22弦 Brittany Lap Harp 15.3 14.3 12.4
29弦 Lorraine Floor Harp 16.0 14.5 12.0
Road to the Isles 22弦 Monashee Lap Harp 13.0 12.7 12.4

それでは、次回は、ハープ弦の長さと張力の関係を調べてみます。

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工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2006/4/29