Carbon Fiber Stick Cello Bow
カーボンファイバースティック チェロボウ

 Arcus Bow  の 秘密

Come from Germany Celloshop.com

Cello Sinfonia





 

主な仕様
スティック材料 カーボンファイバー
スティック 角弓
バランス (グラム・重心) 全長:73cm 重心:約17.5cm(フロッグ端より)
重さ:公称 65

比較:通常の木材・フェルナンブコ製の場合、全長:71.5cm、重さ: 公称 80gです。

フロッグ 最高級スネークウッド (新形状)
金具・巻きもの(Lapping) 825シルバー(スターリングシルバー)、 チタンスクリュー・チタンスライドプレート
巻き皮(Band) 茶レザー
特徴 チェロ弓シリーズでは最軽量 クリャーで力強いサウンド

このページの内容は、Arcus Bow メーカーのコメントを引用したものです。

カーボンファイバーとは

カーボンファイバーとは、プラスティック繊維を1600℃ から 3000℃の温度で焼いて作られる強靭で高強度の繊維です。

この繊維を通常エポキシ樹脂で固めてそれぞれ形を作ります。

この素材は、既に次のような所で色々な形で使われています。

 Cello弓のサイズ ・重量比較

  Arcus Bow Wood Bow
全長 73 cm 71.5 cm
重量 65-70 g 80 g
重心 (弓端より) 24-25 cm 25 cm

弦楽器の弓について

トルテが200年前に現在の形の弓を作って以来、弓の形はそれ程大きく変わってはいません。

Arcus Bow を開発するに当たっては、それらの弓を徹底的に研究しました。

完全な弓とは、次のような物です。

これらの機能を追及した結果、弓に用いられる良い材料に求められる特性は

音について

楽器の音は、人の指紋のように、全て一本一本違う性格を持っています。 それは、製作者の経験によって、それぞれ木材から最高の音が得られるように、切り出し方向、厚さ、曲面形状などが決められて作り出されているからです。

従って、弓の最も重要な使命は、それぞれ楽器の最高の音を引き出す事にあります。 木で出来ている弓のスティックは、比較的大きく振動してしまうので、それぞれの楽器に最も良く合う特性の物を選んで使う事が必要となってきます。

Arcus Bow のスティックは、大きく振動しません。 従って、楽器の持てる最大限の音を引き出します。 多くのテストでそれは証明されました。

多くのプレーヤーが、違った楽器で色々な種類の音楽を演奏してテストした結果、Arcus Bow は他の弓に較べ最良の音が得られました。

Arcus Bow の評価結果は、「大きなボリュームある音量と 少ないサイド雑音で、美しい音」 という物になりました。

音響特性

弦楽器の弦が弓で弾かれた時、どのような現象が起こっているのでしょうか。

摩擦を発生させる松脂が付けられた弓の毛は、一瞬、弦を横に引っ張り、弦の張力を増します。次の瞬間、弦の戻る力が毛が引っ張る力より大きくなると、弦は弓の毛から外れて、元に戻ります。弓を動かしている間、これが繰り替えされて、弦が固有振動数で振動します。 この弦の小さな振動エネルギーがボディーをに伝達され大きな音を出します。

この時、問題になることは、楽器のボディーが振動することに対して、同時に弓のスティックも振動してしまうことに有ります。一見良さそうに思える現象ですが、良く無い結果を引き起こします。

弓のスティックの振動が、弓の毛を通して弦に伝達され、弦の振動を乱してしまう事が問題なのです。

(注)この反作用現象は、工房ミネハラ チェロの力学 の ウルフトーンの現象 と類似の現象です。 こちらをご覧下さい。

弓の材料として、フェルナンブーコが使われる理由の一つは、適度なダンピング特性が有り、しかも、共振が起こり難い材料のためです。黒檀も共振のおこり難い材料であるため、弦楽器の指板・テールピース・糸巻きなどの振動しては困るパーツに使用されています。

カーボンファイバーも共振し難い材料で、Arcus Bow では、大変優れたダンピング特性を示します。

スプルース材は木材の中では共振し易い材料であるため、何故弦楽器の胴にスプルース材が使われるかは良く分かると思います。

反応の良さと言う点では、材料の中を伝播する音の速さ(音速)が重要なファクターです。最良のフェルナンブーコの音速は6,100 m/s. であるに対して、通常のカーボンファイバー材は、7,500 m/s. と、フェルナンブーコ材より勝っています。

弓が浮き上がった時や弓の返しの時に発生する きしみ音 は、綺麗な音を阻害してしまいます。適度なダンピングを持つカーボンファイバースティックはこのようなサイド雑音を吸収し、楽器本来の音を忠実に再現しています。

弾き易さ

初心者でも、ヴィルトーソでも、一本の弓、あるいは、常に同じテンションの弓を使う事に対しては、多くの問題点を感じていると思います。

木のスティックを使用する限り、軽るければ弱い弓となり、強ければ重い弓になってしまうため、これらの背反する事には、限界が出てしまいます。バロック音楽などでは、演奏の途中で弓を持ち替える事も行われます。

このArucs Bow の開発に当たっては、この背反する問題を一本の弓で解決することを最重点で検討しました。最も重要課題は、強さと重さの関係でした。

トルテが弓の材料にフェルナンブーコを選んだ最大の理由は、この材料が最も大きな弾性係数をもっていたためです。(最大30,000 N/mm²)  更に、軽さの点では、密度約1.1 g/cm³と大変軽く、アルミやチタン(当時は有りませんでした)に匹敵する重量対強度比を持つ材料だったためです。

*弾性係数とは、材料に加えられた力でどの程度材料が曲がるかを示す数値で、この数値が大きい材料は、曲がり難いことを示します。

Arcus Bow に使われている材料の弾性係数は、110,000 N/mm² で、密度は約1.7 g/cm³です。従って、この材料の重量対強度比の値はフェルナンブーコ材の約2倍の値です。

構造として特に注意して改良した点は、チューニングスクリュー部にブロンズベアリングを使用した事と、ヘッド部の強度です。

通常の木の材料より50%も強い材料を使用する場合に注意を払った点は、スティックの反りです。通常の弓のような大きな反りをつけなくても、所定の張りが確保出来、強く弾いても、毛がスティックに当たってしまうことは有りません。

通所の弓より50%も軽い材料ですが、フロッグと毛の重量は極端には減らしませんでした。結果的には、通常の弓より、6−9gr程度全体の重量は軽くなっています。また、弓の重心位置は、木の弓に較べ1−2cm程度フロッグ寄りになっています。その結果、演奏感覚では、軽く感じ、速いパッセージが弾き易くなっています。

(工房ミネハラ 注釈) 実際は、軽量化が進んで、通常の弓より、15-20gr程度軽くなっていますが、重心位置は、木の弓とそれ程大きくは変わっていません。

使用に当たって

弓の重心が1−2cm程度フロッグ寄りにあると言うことは、弓の跳ね返りが起こりやすいことが心配になります。

演奏する時にはナットを回して弓の毛を張りますが、このArcus Bowの場合、毛とスティックの間隔を通常の木の弓と同じに張った時、毛の張力は木の弓より約30%程度小さな値になっています。この状態、すなわち毛の張力が低くても良いと言うことが、跳ね返り防止の役割をしています。演奏のスタイルによっては、強く、あるいは、弱く張ってもかまいません。スティックが強い材料で出来ていると言うことは、色々変化をさせて使用出来る大きなメリットになっています。

スティックが強いという事は、更に、強い力で演奏してもスティックが横に曲がらず、有効に手の力を弦に伝達する事が出来るメリット持っています。

強さ

カーボンファイバーのおかげで、通常の木の弓より3倍程度強い弓となっています。従って、不意に床に落とした場合や、不幸にもその上に腰掛けてしまった場合でも、折れ難い弓となっています。

木の弓は、使ってゆくうちに、へたりが出ますが、このArcus bow の寿命は半永久的と考えられます。

温度や湿度などの気候の影響も一切受けません。

ブロンズインサートは、スクリュー穴の磨耗やその部分の亀裂を防ぎ、常にスクリューの巻き易さを補償しています。

 

弓の歴史的背景

1700年前後にクレモナのストラディバリが、今日でも使われているモダンの弦楽器を作ってから約100年後に、トルテが弓の傑作を作りました。

トルテは、1747年に生まれ1835年までパリですごしました。彼は時計職人だったので、科学や特に物理学や数学の知識は豊富でした。1800年から弓の改良製作に入りました。

当時、弓製作で最も問題だったことは、素材の材料が弱く、強度が得られなかったり、すぐに折れてしまうことにありました。彼は次の3つの改良点を探し続け、数年間費やしました。

1) 彼は、ブラジルから届く砂糖の樽の材料のフェルナンブーコに目をつけました。この材料から作られた弓は、程好い強さを持ち、音の伝播も良く、反応は著しく改善し、程好いダンピングで楽器の音は非常に改善されました。

2) 始めは真っ直ぐにスティックを作り、後から曲げて反りを付けることにしました。その結果、木の繊維方向はずっと繋がっていて、弾力性と強度が保たれる結果となりました。

3) 全体の形と、直径、反りを調節して、弓の重心点をフロッグに近づける事が出来ました。

結果として、彼は、強く・良い音の出せる弓を完成させました。その後、彼の作った弓は、パカ゜ニーニの演奏によって疑う余地の無い程良い弓であることが証明されました。

彼もストラディバリと同様、製作の秘伝は残していません。そのため、後世の弓製作者達は彼の弓をコピーしてその設計の極意を探っています。

その後、Christian Wilhelm Knopf (1767-1837, Marktneukirchen)、 John Kew Dodd (1752-1839, London) 、Jean Baptiste Vuillaume (1798-1875, Paris) などが、弓の改良に貢献し今日にいたっています。

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工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2002/11/24