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anime ミニチュアチェロを作る その(1) ホワイトチェロを作る

万年筆のモンブランが大きいのか・・・それとも、チェロが小さいのか・・・


ミニチュアチェロの製作計画・・・楽器って、果たして、どこまで小さく作れるのか・・・

楽器と言うからには、張ってある全ての弦は、ある程度ちゃんとした音が出せること・・・、形状やその縮尺、あるいは、使用する材料などは本物サイズのものに倣ったものであること・・・

そんなことを頭の隅に描いて、このミニチュアチェロを作ってみました。

まずはじめに行ったことは、サイズを決める事でした。 使用する弦の見当を付け、その長さ決め、チューニングした時の弦の張力を計算してみました。

残念なことに、実際のチェロの音程 A D G C (A: 220Hz, C: 65.4Hz)で鳴らすには、途轍もなく太い弦を、緩く張らなければならず、それでは音が出ないことが分かりました。

止む無く、オクターブ上の、ビオラの A D G C の実際の音程 (A: 440Hz, C: 130.8Hz)で鳴らすチェロで我慢することとしました。 弦の長さが、実際のチェロの 1/4 程度であれば、ほぼ演奏可能な弦の張力(テンション)が得られるという事が分かりましたので、殆ど全てのパーツの縮尺を1/4として、左のような図面を作り、製作に着手しました。 画像をクリックすると、大きな画像でご覧いただけます。 オリジナルサイズのチェロは、このチェロです。

チェロの構造や使用する材料、あるいは、製作工程など、可能な限り本物サイズのチェロと同じになるように心がけ作ってみました。 以下、それをご紹介しますので、楽器製作や演奏などにご興味のある方はご覧になってください。

  完成したミニチュアチェロの演奏

型枠と、リブの製作





本物のチェロを作る時と同じように、はじめに、型枠を作りました。

それに、予めベンダーで曲げておいたリブを沿わせて、コーナーブロック、上ブロック、下ブロックに接着して、リブを製作します。







型枠の外側に見えるものが、接着を終えたリブです。

リブの材料は、ある程度 "虎目"の入ったメープル材で、実際のバイオリン製作時に使う 1.3mm 厚の材料を使用しました。





ここで、実際の本物サイズのチェロと違うところが一つあります。

Cバウツ上下のコーナーブロックの間のリブは、曲げがきつく、1.3mm 厚の材料では、それを曲げて作ることが出来ませんでしたので、

止む無く、リブの材料と同じ メープル材でCバウツ上下のコーナーブロックを作り、それに、アッパーバウツ、ロワーバウツのリブを張り付けました。

コーナーブロックは外からは見えませんので、出来上がった状態では、外から見ると、Cバウツのリブとコーナーブロックが一体で出来ていることは分からなくなります。


表板の製作

リブに接着する直前までに仕上がった状態の表板です。

表板は、本物と同じスプルース材をセンターで剥ぎ合せたものを使い、外形を切り出して、裏と表を彫ってカーブを作り、f字孔を開け、周囲にパフリンク゛溝を掘りパフリンク゛を埋め込んであります。

表板の厚みは、一番薄い部分 (f字孔のあたり) で、約 1.8mm 程度まで薄く削りました。 電燈に透かして見ると、光が見える程度の厚さです。

実際の本物サイズのチェロの場合、最も薄い部分の厚さは 4mm 弱ですので、縮尺1/4に換算すると 1mm の厚さになりますが、そこまでは薄くできませんでした。

残念なことに、カーブを削っていったら、材料の段階では見えてなかった"樹液層"が現れてしまいましたが、そのまま進めることとしました。








裏側には、表板の補強と音の伝達を良くするためのバスバーも付ました。







バスバーの長さは 135mm, 中央付近の高さは 約 8mm です。

表板の製作で、最も神経を使ったところは、f字孔 の切り出しでした。 なんとか、恰好は整ったものの、孔や幅は僅かに大き目にできてしまいました。

パーフリングも苦労しました。 実際のチェロのパーフリングは、幅 2mm 弱ですので、縮尺1/4に換算すると 0.5mm の幅・・・と言うことになります。 その厚さの 黒・白・黒 3層のパーフリングの製作にもチャレンジしてみましたが、曲げると直ぐに折れてしまい、また、パーフリング溝も狭くて掘れないため、止む無く、バイオリン用の最も幅の狭い 1.3mm 程度のパーフリングをそのまま使うこととしました。 パーフリング溝も 手掘り ですので、少しよたよたしていますが、なんとか、恰好は付いたようでほっとしています。

パーフリングの幅は、実際の比率より2倍以上大きいのですが、完成したチェロでは、それほどの違和感は無いのでは・・・と思います。


裏板の製作



パーフリング溝を掘った状態の裏板と、曲げが終わり、はめ込み前の状態のパーフリングです。


裏板は、ある程度 "虎目"の入ったメープル材をセンターで剥ぎ合せたものを使い、外形を切り出して、裏と表を彫ってカーブを作り、周囲にパフリンク゛溝を掘ってあります。

パフリンク゛は、ベンダーアイロンを使い、折れないように細心の注意を払って曲げてあります。 裏板の場合、パーフリングの端は、すべてがぴったり密着するように長さを整えておくことが必要なので、神経を使います。








パフリンク゛を、仮挿入した状態です。





パフリンク゛溝に接着剤を塗り、パーフリングを埋め込んで、接着剤が乾燥した後で、裏板の周辺の窪みを彫り、スクレーパー、サンドペーパーで表面を仕上げます。 縁の丸みもこの状態である程度仕上げてあります。

裏板の厚さは、中央付近で 約3.5mm、 周辺部の最も薄いところで 約2mmです。

この状態で、リブに接着します。



その前に、表板のf字孔から見える位置に、"製作ラベル"を貼っておきます。 

ちなみに、"Kazuki" は、1歳半になった、二人目の孫の名前です。

5歳になった一人目の孫には、こちらでご紹介しているチェロ "Hiroki" を製作済みです。

二人の孫たちが、将来 チェロに親しんでくれたら嬉しい限りです。


ネックの製作




ネックの材料は、はっきりとした虎目こそありませんが、本物とおなじメープル材を使用しました。

メープルは硬いので、小さなネックを削るのは結構大変です。






削り終わった状態のネックです。 長さは 約12cm です。





スクロールの渦巻きも、なんとかそれらしく仕上がりました。

ペグ用の穴は、この段階では下穴の状態です。



表板・裏板・ネックの接着

通常のチェロ製作工程順では、はじめに製作したリブに、表板を接着し、次に裏板を接着して胴を完成させます。 その次に、ネックを仕込む "V溝" を彫り、そこにネックを接着する・・・と言う手順で進めます。

しかし、このミニチュアチェロの場合、リブに、表板と裏板を接着した胴はとても小さく、そこにネックを仕込む "V溝" を彫るのは、とても面倒な作業となり、また加工精度も良くないと考えられるので、リブ単体の状態でネックを仕込む "V溝" を彫って、その段階でネックを先に接着することとしました。

左は、ネックが先に接着された状態です。 従って、これから接着する表板には、ネックとサドルを仕込む部分に、予め "切り込み" を彫っておきます。


次に、リブに表板を接着しました。

表板の隅の方に、外からは全く見えませんが、サインと日付を書いてあります。

昔のバイオリン製作家の作品などにも、このようなサインの入った物があるそうです。

この状態で、裏板を接着するネックのヒール部、リブの接着面を面一に仕上げておきます。







これは、裏板を接着する直前の状態です。







裏板の接着が完了すると、こんな恰好になりました。







サドルの接着、エンドピン用の下穴などを開ければ、これでホワイト段階のチェロが出来上がりました。







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工房ミネハラ
Mineo Harada

Updated:2011/2/16
First Updated:2011/2/12