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チェロの力学
第4章 ウルフトーンの発生メカニズムと対策は?
★仮説とする振動系 |
この章は、少し頭が痛くなるかも知れませんが、結論だけでも、ご覧下さい。
通常、機械工学では、余計な振動を起こしては困る場合に、Dynamic
Damper (ダイナミックダンパー)という原理のダンパー(減衰装置)を積極的に使用します。
この原理を、簡単に説明しますと、振動を起こしては困る部分に、振動を止めたい周波数に共振する振動系(振動し易い部分)を敢えて強制的に付加すると、振動を止めたい部分の振動が止まってくれるという、大変優れたものです。
チェロのウルフトーンの発生原理を、この、Dynamic
Damper (ダイナミックダンパー)の原理と同じではないかと考えると、結構、実際の対策との関係が上手く理解出来ました。
これは、あくまでも、工房ミネハラの仮説ですが。
それでは、Dynamic
Damper (ダイナミックダンパー)とは、どのような物か、簡単に(数式はややこしいですが)ご説明させて頂きます。
図12
上の図12で示した、p の部分が、本来の目的で使いたい部分です。
今回のチェロの場合は、音を空中に発散させる表板の部分と考えても良いと思います。 この部分は、質量とバネで構成される振動系と考えられ、そこには、固有の固有振動数が幾つか有ります。
このような、メインの振動系に、更に質量とバネで構成される振動系 q が連結されると、その部分も振動を始めてしまい、p の部分の振動を打ち消して、止めてしまうことがあります。 これが、Dynamic
Damper (ダイナミックダンパー)です。
本来の振動系 p には、 w と言う振動数の F と言う大きさの加振力が作用しますが、その加振力が、m に作用しても、 m が全く振動しなくなってしまう場合が出でしまいます。
図13 この辺は、読み飛ばして下さい。
図14
上の図14で、 no
damping
と書かれていますが、これは、振動系 q が、素晴らしく良く振動して、減衰が無いという状態を仮定したものです。 実際は、このような物は無く、ある程度のダンピング(振動を止めようとする働き)は必ず有ります。
ただし、もし、大変鳴りの良いチェロだったとしたら、このダンピングは相当小さいかも知れませんので、極端な場合として、ダンピングがゼロの場合として、話を先にすすめさせて頂きます。
上の、式(38)や (23)’は、後でもまた出てきますので、気に留めておいて下さい。
図15
この図15が言っている事は、重要です。
q=w のとき と言っていますが、これは、図12の p の部分 (チェロの表板と仮定) を振動させようとしている周波数 w が、チェロのどこかに連結されている振動系 q の固有振動数 と合う場合 と言うことです。
そのような振動数の場合は、 Xo が ゼロ になると言う結果となってしまいました。
すなわち、 Xo とは、表板の部分の振動と仮定していますので、 その部分の振動が ゼロ と言うことは、 ”表板の振動が止められてしまった” ということになります。
これが、Dynamic
Damper (ダイナミックダンパー) ということです。
大変飛躍した仮説とは考えますが、 チェロを叩いた時に聞き取れる音程(チェロの固有の振動数)と、ウルフトーンの発生する音程を考えますと、この仮説をウルフトーンの発生メカニズムに当てはめて考え事は、ある程度ご納得いただけるのでは無いかと考えますので、
いよいよ次回は、チェロの構造や、チェロを叩いた時に聞き取れる音程との関係から、狼 ウルフトーンの発生メカニズムを推定致します。
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工房ミネハラ
Mineo Harada
Updated:2008/5/23
First Updated:2000/7/14
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