図36 Cello 弓のスティック中央変位
ds
・・・スティックの堅さとしなやかさ
この図を見る前に、スティックの堅さとしなやかさを解説した こちらのページをご覧ください。
右手で弓に圧力を掛けたときに、右手は何らかの動きを感じ取ります。
それは、加えた圧力に対して、スティックがどれ位動いたか (撓ったか)・・・というものです。
■その動きが大きければ、柔らかい弓・・・と感じるでしょう。
■逆に、その動きが
小さければ、堅い弓・・・と感じるでしよう。
その評価を、スティック中央変位 ds
という数値で考えます。
弦に働く力(圧力)Ph
が どの位置でも 200gr となるとして、
毛荷重一定
の条件で計算しています。
すなわち、弓のどの位置でも同じ音量で弾く・・・という条件を近似しています。
このような条件の場合、スティック中央変位 ds は、毛が弦に当たっている位置
x の値に対して、直線的に変化することが分か
っています。
上の図にしたものが、一定の圧力
(200 gr) で弾いた時の スティック中央変位 ds です。 この図を見ると、
★ x
の値が、ゼロ(弓の先端)でも、弓によってスティック中央変位 ds は大きく違っています
。
★ 直線的に変化する傾き にも大きな違いが見られます。
★ x
の値が、ゼロ
の スティック中央変位 ds は スティックの堅さ を表し、
★ 直線的に変化する傾き が、スティックのしなやかさ を表すと考え
られます。
このような指標を明示すれば、
弓の強さの原点であるスティックの材質が良いか、 力強い演奏にも使える強い弓か。
弓の先に行っても力強く演奏できるか。
新素材の弓・・・カーボンファイバー製・・・
の弓でも、良いものはそれなりに性能が高い。
など、お客様に示すことが可能となります。
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■Arcus Veloce
とArcus Sonata
は、スティックが中空のカーボンファイバー製の弓で、弓先に行ったとき、スティック中央変位 ds は小さく、スティック
が堅い ことを物語っています。 また、、直線の傾きも大きい・・・(弓先に行ったとき、スティック中央変位 ds が小さくなる)ので、スティックのしなやかさ をあまり感じられないる弓・・・ということが分かります。
■Joseff.P.Gabriel G-30
(ドイツ製 手工品)
や Carbow
は、 弓元に近い x=0.75 の位置でのスティック中央変位 ds はそれ程大きくなく、また、直線の傾きもやや寝ているので
Arcus
よりも、スティックのしなやかさ
も感じられる弓・・・ということが分かりますが、コシの強さも抜群です。
ここでご紹介している J.P.Gabriel G-30
(ドイツ製 手工品)
のチェロ弓は、最上級クラスの弓といえます。
■Sandner
や J.P.Gabriel G-18
(いずれも、ドイツ製 手工品・・・価格は、昔、20万円程度)
は、弓元に近い x=0.75 の位置でのスティック中央変位 ds はやや大きくなくなっていますが、直線の傾きもやや寝ているので、スティックのしなやかさ を感じられる弓・・・ということが分かります。
■RCB-80
と
RC-16 は中国製の低価格チェロ弓ですが、Sandner
や J.P.Gabriel G-18
とほぼ同じ程度の値を示しています。
ということは、
弓の強さ と言う観点では、Sandner
や J.P.Gabriel G-18
とほぼ同等性能・・・ということが分かります。
ただし、RCB-80
と
RC-16
は角弓であるため、直線の傾きが大きくなっており、スティックのしなやかさ は、少し足りないかも知れません。
■CB-380
と
Carbondix はやや柔らかい と感じられる弓・・・ということが分かります。
■それらより上にある AC-30、CB-150、CB-500
は、へなへなの感じがする弓でしょう。 力強い演奏には、不向きだと思います。
(注)
弓の力学
では、13本の Cello 弓 に関して、こちらでご紹介したように、弓の中央に錘を載せ、その時のスティックの撓みを計測し、スティック材質の強さ・・・あるいは、スティック材質の品質の良さ・・・を示す 縦弾性係数
E
の値を求め、その数値により、、スティック中央変位 ds を計算する・・・という方法を用いました。
しかし、ここでご紹介する 弓性能計測装置 を用いることによって、面倒なスティックの撓みを計測することをしなくても、スティック材質の強さ・・・あるいは、スティック材質の品質の良さ・・・を示す 縦弾性係数
E
の値を(推定値)
として求めることが可能となり、弓の基本性能
をグレード分けすること
が大幅に簡便となりました。
上の
図36 Cello 弓のスティック中央変位
ds
の データと、こちらでご紹介したデータを比較してみてください。
ほぼ、同じ傾向のデータが得られていると思います。
弓の強さ
と
扱い易さ
を示す数値データ
は 振り子振動の振動数 fo
を計測することと、慣性モーメント
Ib の二つで
、大よそのランキング付け出来ます。
その結果を、下の図に示します。
図38 Cello 弓のランキング
この結果からも、
例えば、x=0.5
(弓の中央) の、振り子振動の振動数 fo を計測するだけで、
★ 16.5Hz
以上
(A)
特上グレード
★
15Hz
以上
(B)
上グレード
★
15Hz
未満
(C)
並グレード
弓の基本性能
をグレード分けすること
が可能と考えます。
これが、工房ミネハラ
が辿り着いた弓の基本性能
を知る最も簡単な計測方法で、弓性能計測装置
を提案する理由です。
Patent
Pending
ここで、気になることがあると思います。
それは、x=0.5
(弓の中央) の、振り子振動の振動数 fo の数値の差が小さい・・・ということです。
しかし、実際に計測される 振り子振動の振動数 fo の数値は、毛を張った状態の毛間隔
d2
の値を正しくセットすれば、
何回測定しても再現性は良く、計測される数値の差は、0.1-0.2Hz
程度の小さな差になっていますので、
上のような大胆なグレード分けの実用性は十分と考えております。 |
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